鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「あらーっ、美晴ちゃん」



着替えを済ませ、エレベーターを待っていると、唯野さんと比嘉さんに声を掛けられた。比嘉さんは「久しぶりね、元気?」と言ってきたけれど、唯野さんはなんだかこっちを見ては笑っているだけ。



なんだか見透かされているかのようで気まずい。どうか、課長がここに来ませんように。



一方的に話す比嘉さんに相槌を返し、ずっと微笑んでいる唯野さんにいたたまれなくなっているとエレベーターが上がってきた。


とりあえず課長は来ていないから良かったと乗り込んだのも束の間、すいませんと乗り込んでくるのはなんとあの営業マン。間が悪すぎる。しかもエレベーターは満員でボタン付近にいたあたしの隣に乗り込んだ彼はピタッと密着してきた。


「・・・ど、どうも」



「あんた、部署変わったんだ?俺のせい、だよな?」



とりあえず挨拶だけで済ませたかったのにこんな満員のエレベーターの中でその話題はやめてほしい。違いますよと小さく首を振ったのに突然左手に感じる異変。チラッと営業マンを見るとあたしの左手首を掴んでた。


嫌だ。課長に掴まれたときは嬉しかったのにすごく嫌だ。でも離そうと手を振っても力強く掴まれてビクともしない。お願い、早くエレベーター着いて。
< 230 / 266 >

この作品をシェア

pagetop