鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
真っ白なチャペルの扉、俺と腕を組むのは今まで見た中で一番綺麗な母さん。

なんだか直視できないな。こんな風にまさかバージンロードを歩くなんて思わなかったから。


オルガンの音が鳴り響き、ゆっくりと扉が開かれる。先に進むように促され、ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ花嫁姿の母さんと歩くバージンロード。

俺、ちゃんと父さんの代わりができたかな?わがままじゃなかった?ヤンチャで大変じゃなかった?ここまで俺を一人で育てるのは本当に大変だっただろうな。



俺の知らないところでたくさんたくさん犠牲にしたものもあったんだろう。それでも文句一つも言わず決して優しいだけじゃなかった母さん。

手も出されたし、よく怒られた。それでも道に逸れずに来られたのはきっと父さんが俺に道標を与えてくれたから。


父さん、母さんは今から父さんじゃない別の人と歩んでいくんだ。だから、俺に与えてくれた使命もバトンタッチ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ寂しいし、父さんも寂しいだろうけれど笑ってバトンタッチするな。


「・・・冴子、幸せに、なってください」
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