鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
好きなのは私だけ

嫌いじゃない

八月半ば、今日は課長と冴子さんが引っ越してくる日。私の家は二階建ての白いハイツ。横並びに四棟。そして駐車場を挟んで四棟向かい合っている。


私は、その真ん中の棟に住んでいて課長と冴子さんはその向かいの棟に引っ越してくる。つまりお隣さんならぬお向かいさんになる。だから、これからは気を抜けない。スッピンボサボサ頭なんてありえない。

「今日からお向かいさんだな、よろしくな」

「は、はい。こ、こちらこそよろしくお願いします」

先に部屋の掃除をするために、早めにきた課長と冴子さん。話を聞かされたときは本当に驚いたけれど、あっという間にやってきたこの日。


やっぱり、会社ではプライベートをそんなに話せないから、引っ越しの話はあまりできなかったけれど、これからは会社だけじゃなく窓を開けたら会えるんだ。

「美晴ちゃん、掃除手伝わせちゃってごめんなさいね」

「いえいえ。暇でしたし」

鍵を開けてもらい、中に入ると同じハイツなのに建物の構造が全然違っていて面白いと思った。
「広いな。それに日当たりも悪くない」

「悠貴、あなたあの奥の部屋使いなさい。お母さんはこの和室を貰うから」


私の部屋から見える向かいの部屋はなんと課長の部屋になってしまった。絶対に変な部屋着なんて着られない。それにこれからは洗濯を干すときも気を遣わなきゃ。


そんな風に一人、勝手に葛藤している間に課長たちはテキパキと掃除を始めていた。急いで私も手伝う。本当にここに課長と冴子さんが住むんだ。
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