鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
胸元まである長いストレートの黒髪。小顔、そして、大きな黒目。琴美は、同性の私から見たもとても可愛い。その割にしっかりしているから私からすれば、頼れるお姉さん的存在。


「まあまあ、落ち着きなさいよ。とりあえず、これでも食べなさい」


そう言って、琴美がカバンから取り出した箱をテーブルの上に置いた。そして、蓋を開けて私に食べるように促した。

「これ、ショコラストーンでしょ?どうしたの?買ったの?」

「今は夏場で売れ行きがイマイチらしいから貢献してって頼まれたの。さあ、食べるわよ」

私が働くここ、『フルーリー』は地元に本社がある老舗洋菓子ブランド。百貨店にもお店などを出していて名前を聞くとこの辺では分からない人はいないのではという銘菓。

中でも、売れ筋ナンバーワンのショコラストーンは、宝石のようにたくさんのキラキラしたチョコレートが箱詰めにされたフルーリーの看板商品でもある。それこそ、バレンタイン時期なんて売切れの店舗は多数。



私は、高校の時、百貨店の中の、フルーリーで販売のアルバイトをしていて、お父さんにはよくここのチョコをバレンタインに渡していた。

いつも、お父さん、喜んでくれていたんだよね。お母さんの分と二つ分のバレンタインチョコ。

「美晴、食べないの?好きなの選んでいいのよ」

「食べる、食べる」
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