恋しくて、哀しくて
声の主は、鉄道会社の社員さんだった。



「毎日、見にきてるね。帽子、かぶってみる？」


その社員さんは、学に視線を合わせると、自分がかぶっていた帽子をかぶせてくれた。



「良かったね、学！かっこいいよ」



私が誉めると、学は喜んで、その場でジャンプをした。



「ありがとうございました」



お礼を言いながら、社員さんの顔をちらりと見る。おそらく２０代であろうその顔は、優しい眼差しで学を見つめていた。


「今日は寒いから、お家に帰ったほうがいいで。これ、あげるから」



社員さんはそう言うと、学に電車のステッカーを手渡した。



「すげー！かっこいい！お兄さん、ありがとう」


学は、興奮気味にお礼を言った。社員さんは、軽く手を振って、駅の方へと歩いていった。



なんだか胸が、騒がしくなった。



< 5 / 51 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop