猿女の恋愛事情





「あ、れ。どちら様?」


背が高く、タレ目が特徴的な男の子。


こんな人学校にいたんだ。へえ、イケメン。



「頭打って記憶飛んだ?これ見せればわかる?」



そういうと彼はライオンのように牙を出したかと思うと八重歯に指差した。


「あっ…りっ理人おおおお!?!?!?」



八重歯といえば理人。


だけど目の前にいるイケメンは記憶の理人とは全然違っていた。


「理人はこう!もっとやんちゃで悪そうな顔してて…小学校の頃は染めてたのに…やめたの?」



すると照れたように笑ってまた八重歯を見せた。


「やんちゃはやめた。…けど女好きは治んねえな。」


とすっかり黒くなった自分の髪をみながら言う。


理人って小学校の時からモテたもんな。私も仲良くて他の女の子に嫌がらせされたこともあったっけな。遠い昔のお話だわ。



「懐かしいね。理人。元気にしてた?」



しみじみ言った。変わってしまった外見が、一緒にいなかった時間を物語るようでお母さんのような気持ちになった。



「母さんみたいなこと言うなよ。俺は元気。そっちは?あ、冬馬…。」


「冬馬くんのことはもういいの!ふっきれた!んでもって新しい恋探すんだ。」


理人をさえぎるように言う。同情されるのは嫌。好きじゃないの。そうしたら決意が揺らいじゃいそうで。



もう冬馬くんのことは諦めたんだから。



するとはははっと笑いが聞こえた。


私は訝しげに、何よ。と問う。


「ほんっと。お前はサバサバしててさっ…男みてえだなっ。」



笑いながらそういう理人に悪気はなさそうで。


幼いころから男みたいと言われていた私からしてみてもその言葉は褒め言葉のような気持ちで受け取っている。




「まあね。」




だから私はまんざらでもないように一言返した。



「んじゃ…久しぶりに会えてよかった。俺も少しはいい男に成長したかな…。冬馬みたいに。」




去り際に、そして唐突にそんなことを聞いてくる彼に私は



「なったんじゃない?エロマセガキ。」



そんな皮肉を返してやった。






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