やばい、可愛すぎ。


どうして、そんな顔をするの。


どうして───そんな、悲しい顔をするの。



「……そう、なの……?

 でもあなたは───あの時の、」


「───っっ!」



そこまで女の人が言いかけると、皐月くんは唇をかみしめて、



「───ぁ、さ、皐月くんっ!?」




私たちの家を通り過ぎて、走り去って行ってしまった。


思わず引き留めようと伸ばした手は───するり、とすり抜けていく。


どんどん、皐月くんの背中が遠くなっていく。


一瞬、見えた皐月くんの横顔はあまりにも、


寂しげに───心の中でせめぎ合っているような、そんな表情だった───





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