やばい、可愛すぎ。
微熱と雨と思い出に


母は、もともと病弱な人だった。


幼稚園に上がるころ、俺が母と逢える場所は白いベットと、白い床、白いカーテン、何もかもが真っ白な場所だけだった。


母は常に何か管を腕につなげて、俺が病室へ入っていくと、

必ず「今日も来てくれてありがとうね、皐月」といいながら俺の頭を撫でてくれた。



幼稚園で、こんなことがあったんだよ。

そうなの、皐月は楽しい?


うん、とっても。


母は、いつだって俺の心配をしてくれた。

幼稚園の帰り迎えに来るのが母でなくて、家政婦でも、平気。

家に帰っても、お母さんが出迎えてくれなくても、平気。



今こうして、優しい温かな手で自分の頭を撫でてくれる───この時間があれば、どんなことだって耐えてみよう。



文句もいわない。

わがままもいわない。


そうしたら、きっと母は元気になってくれる───



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