やばい、可愛すぎ。
『家に帰ったら荷物の支度しておけよ。
運送屋には頼んでおいたから。白井さんの家に手土産も買っておいた』
「そこまで手回ししてるんなら、まず息子に話せよ」
父親の中で、優先順位がおかしくなっていないだろうか。
『いきなり言わないと、皐月はいじけるだろう』
「……いじけるって、もう俺子供じゃないんだけど」
『子供じゃないというやつほど大人ではないよ』
「……」
ああいえばこういう、みたいな古典的な論破のされ方をしてしまった。
しばらく、ぼけーっとしていると、信号がいつの間にか青に変わっているのが見えた。
足を進めようと、前へ動かして───
『皐月』
「何」
『いや、居候先のことなんだが実はお前と同い年のおん───』
と、そこまで言いかけたことろで、俺の脚は止まった。