「秘密」優しい帰り道【完】
「こんにちは」
校門前から、ベンチに向かって挨拶した。
「遠いな、こっち来なよ」
向かい側の人が手招きしたから、私は少し考えてから走って近づいた。
そしてその人が少し横にずれた。
えっ、座れってことかな......
でも、そこに座ったら、凪さんの目の前に......
「座んな」
凪さんは私を見上げて、笑いながらそう言って、
長い足をゆっくりと横にずらして、
私が前に座れるようにしてくれた。
緊張する......
私は軽く頭を下げてから、リュックの肩紐を両手でつかんだまま、
小さくなってベンチに座った。
その時、隣の人の携帯が鳴った。
「なんだよ、うん、うん。まじで???
わかったよ、しょーがねーなー。
今行くよ、あぁ、じゃあ」
隣の人は立ち上がった。
「なんか、タケが教室で呼んでっから俺戻るから。
凪は?どうする?」
「あぁ、俺は適当に帰るよ」
「じゃあ。ごめんな」
隣の人は、自販機の方から抜けて、急いで高校の方へ走って行ってしまった。
あれ、ということは、
ベンチにふたりきり.....