「秘密」優しい帰り道【完】
謝っちゃうんだ。
素直に謝られて、
心のどこかで、違うって否定してほしかった自分がいたことに気づいた。
全部私の思い込みなんだって、
似てないって、くるみはくるみだって
もう一度言ってほしかった。
重ねてなんかないって、
否定してほしかった。
でも、謝っちゃうんだ......
「くるみの受験が終わったら、
ちゃんと全部話そうと思っていた」
凪くんは、ずっと俯いたままだった。
冷たい風が吹いて、凪くんの髪を揺らして、
こんな時でも、その綺麗な横顔を見ると、
素敵だなって、
好きだなって思ってしまう。
私って、バカだな........
「今はまだ、言いたくない。
受験が終わったら、俺の話聞いてほしい」
言い終わると凪くんは、真剣な顔でこっちを向いた。
まっすぐに見つめられて、
どうしようもなく好きで........
離したくないって思ってしまうけど.........
でも……
目が合うたびに、私を見ていないことを思い知らされる……
そんなの、辛い……
目を合わせていられなくて、ぎゅっと目を閉じて下を向いた。
「嫌だよ......
もうこれ以上.......」
「くるみ」
「これ以上、代わりにされたくない。
私は、希未さんじゃない!」
下唇を噛みしめて凪くんを上目で睨むと、
凪くんは大きく目を見開いて驚いた。
「私はもう、希未さんの代わりになるのを今日でやめる。
もう、やめる........
私がいつまでも凪くんの隣にいたら、
凪くんはいつまでも、希未さんを思い出して、
過去から一歩も前に進めない。
そんなの、だめだよ......」