「秘密」優しい帰り道【完】
「あ.......はい」
私が頷くと「座って話そう」と、
潤平さんは笑吉屋の前のベンチの方へと歩いて行った。
「なんだろうね」
茜が不思議そうに首を傾げた。
「うん」
「じゃあまた明日ね」
「うん、またね」
茜に手を振って、私もベンチのところに走った。
いつもの場所に、潤平さんは座り、
私は凪くんがいつも座っていた場所に座った。
「ごめんな、突然」
「いえ、大丈夫です」
「高校は?」
「O高校に受かりました」
潤平さんは、ほっとしたように微笑んだ。
「よかった。おめでとう」
「ありがとうございます」
潤平さんは、一度頷いてからまた話し始めた。
「凪と、会ってないんだって?」
潤平さんは、私の顔を覗き込むように前かがみになった。
「はい」
「どうして?」
「どうしてって、それは.......」
「俺のせいだよな」
「えっ?」
潤平さんは、自分の髪をくしゃくしゃっとかいた。
「俺が余計なことを言ったから。
ほんと、ごめん。
俺、そんなつもりで言ったんじゃなかったのに」
私は大きく首を振った。
「潤平さんは、何も悪くないです。
むしろ、教えてくれて感謝しているぐらいです。
これでよかったんです。
あのままずっと凪くんのそばにいたら、
凪くんのためにも、
私のためにも、
希未さんのためにも.......
よくなかったと思うので」
潤平さんは、唇を噛みしめて下を向いた。