「秘密」優しい帰り道【完】
リュックの肩紐から手を離すことができない。
緊張しすぎる。
通りには、高校生がパラパラと歩いているけど、
中学生はほとんどいない。
部活中だし、3年生で、川の方向に行く人は少ない。
笑吉屋の中にも少し高校生がいるぐらいで、
後ろのベンチには、今日は誰もいなくて......
「なんか飲む」
「えっ、いらないです」
頬を熱くしながら顔を上げ即答すると、凪さんがあはははっと笑って、
ゆっくりと立ち上がった。
そして自販機に行って、アイスコーヒーを買った。
「ほら、何がいい?」
えっ......
「ほ、ほんといらないです」
リュックの肩紐をぎゅっと握りしめて、
俯いた。
「急いで帰んなきゃいけないとか?」
「いえ、そんなんじゃないです、全然」
ずっと俯いていると、ガタンと自販機から音がして顔を上げた。
凪さんが両手に缶を持って戻ってきて、
ゆっくりとベンチに座った。
そして片方の缶を差し出してきた。
「名前、なんていうの?」