「秘密」優しい帰り道【完】
凪くんがこっちを向いたから、
そっと袖から手を離した。
「わかった」
ゆっくりと土手の方へと歩きだした凪くんの隣に行き、
じっとその姿を見つめてしまった。
「ん?」
見つめながら歩いていたら、そんな私を見て凪くんが首を傾げた。
私は首を振って、前を向きなおした。
土手に上がり、何から凪くんに話そうか考えた。
まず謝りたい。
そして、確かめたい。
じゃあ、どうやって謝ろう。
どうやって確かめよう。
いろんなことを考えすぎて、
言葉を悩みすぎて、
頭の中がごちゃごちゃになってしまった。
いつもほとんど誰も通らない土手。
高く静かな道を、二人きりで歩く。
結局何も話すことができないまま、
橋の元に着いてしまった。
「じゃあ、気を付けて帰れよ」
凪くんは、少し切なそうに笑うと、
また来た道を戻り始めた。
背の高い、その後ろ姿。
ゆっくりと
ゆっくりと、
その後ろ姿が小さくなっていく。
行ってしまう。
このままじゃ私は、
絶対に後悔する...........
「凪くん!!」