「秘密」優しい帰り道【完】
土手の途中で、凪くんは振り向いた。
「私......
私の気持ちばっか凪くんに押し付けて、
凪くんの気持ち、聞いてない。
受験が終わったら、聞いてほしいって言われたのに、
私......このまま聞かなかったら、
後悔する。
だから、聞かせてほしい。
凪くんの気持ちを、
全部、私に話してほしい」
大きな声で、少し離れたところで振り向いた凪くんに言うと、
凪くんは、下を向いてしまった。
しばらくそのまま、
下を向いた凪くんを見つめていたら、
苦しそうな顔で凪くんが顔を上げた。
「俺.......
2学期の始業式の日。
笑吉屋のベンチに座って、店の中にいるくるみを、
ガラス越しに見た時、
幼馴染の希未に似ていると思った」
幼馴染........
希未さんは、幼馴染だったんだ。
「でも、
俺の手の上にペットボトルの蓋をのせたくるみを間近で見て、
やっぱ似てないって、
違うって思った。
ずっと小さい頃から希未を毎日見ていたから、
なおさら違うって思った。
似てない、
同じじゃない。
だから、くるみを希未と重ねたことは、
一度もない。
くるみを希未と思って接したことなんて、
一度もない。
ただ........」