「秘密」優しい帰り道【完】
「ただ?」
私が首を傾げると、凪くんは一度下を向いて、
また顔を上げた。
「希未と同じ言葉を、くるみが言った時、
ふと希未を思い出したことがあった。
くるみといるのに、希未を思い出してしまって、
それは、本当にくるみに悪いと思った。
ごめんな......くるみ」
そんなの......亡くなった人を思い出すなんて、
当たり前だよ.......
私は思いっきり首を振った。
「思い出したことはあったけど、
重ねたことは一度もない。
ずっと俺は........くるみが好きだった。
俺の落とした小さな蓋を拾って、
それについた砂を落としてから俺の手の上にのせたくるみに、
俺は、恋をしたんだ」
あの時..........
あの時から凪くんは私を..........
「話したかったのは、それだけだよ。
聞いてくれてありがとな」
凪くんは、ははっと笑って下を向くと、
また向きを変えて私に背中を向けた。
待って。
それだけじゃない。
まだ、肝心なことを聞いてない.........
「凪くん!!!!」
さらに離れてしまった凪くんに、
さらに大きな声で呼びかけると、また凪くんが振り向いた。
「話って本当にそれだけ?」