「秘密」優しい帰り道【完】
凪くんは、私に向かってゆっくりと歩き出した。
そして、少し歩くスピードを速めると、
左足を引きずり出し、
苦しそうな表情で、私に向かって左足を引きずりながら、
走ってきた。
「もう、いいよ」
私が凪くんの元に走り出そうとしたら、
「来んな!!」と、凪くんが叫んだから、
私はその場に立ち止まった。
凪くんは、片手は肩にかけたバッグの持ち手を掴んで、
もう片方の手は、ぐっと握りしめて、足の動きに合わせて大きく振っていた。
ザー、ザーと地面を擦る音をさせながら、
苦しい表情の凪くんが、私の元まで、
走ってきて、
私の前で止まった。
「くるみのおかげで、
ここまで走れるようになった。
証拠になるかわかんないけど、
これが今の俺の、
全力疾走だ」
凪くんは、はぁはぁと息切れしながら、
私の顔を見て優しく微笑んだ。
「凪くん........
走ってきてなんて言ってごめんね。
痛いよね.......ごめんね」
涙があとからあとからこぼれ落ちて、
両手で顔を覆って泣き出してしまった。