「秘密」優しい帰り道【完】
「そう.....かな.....」
恥ずかしくなって下を向いたら、
そっと手を繋がれた。
「行こ」
ゆっくりと、凪くんの歩幅に合わせて、
一緒に歩き出すと、温かい風が優しく吹いて、
桜の花びらが私たちの元に舞い落ちた。
あなたと歩いた、この優しい帰り道を、
これからもずっと、
ゆっくり
ゆっくりと、
あなたの歩幅に合わせて歩いていく。
土手を下りて、笑吉屋の前を通った時、
自販機前にいたおじいさんが、ペットボトルの蓋を落とした。
ペットボトルの蓋は、おじいさんのすぐ目の前で止まり、
よいしょとおじいさんはすぐにその蓋を拾った。
あの時、
凪くんが落とした蓋が、私の元に転がってきたのは、
もしかして..........
校門に入る前に、
手を繋いだまま、私は空を見上げた。
「ありがとう.......」
青空に向かってそうつぶやくと、
凪くんが立ち止まった。
「くるみ?どうした?」
私は空を見上げるのをやめて、
首を傾げた凪くんに思いっきり笑顔を見せた。
「それはね.......秘密」
【秘密 優しい帰り道】
2014.2.15 end