「秘密」優しい帰り道【完】
名前......?
「あっ!」
顔を上げると、優しく微笑んでいる凪さんと目が合ってしまい、
バッと下を向いた。
私、さっき『凪さん』って思わず言ってしまった......
ばかぁぁぁーーー!!!
恥ずかしすぎて、下を向いたままぎゅっと目を閉じた。
「ごめんなさい!私……
友達が呼んでいたからそれで.....
ほんと、ごめんなさい!」
さらにぐっと頭を下げると、
頭を撫でられる感触がして、ゆっくり顔を上げた。
「名前、知っててくれて嬉しかった」
目の前の凪さんが、私の頭に手を伸ばしている。
嬉しかったって、言ってくれた.......
私の頭を撫でながら、優しく笑ってくれて、
その優しい気持ちが
優しい手が、すごく嬉しくて.......
その笑顔をずっと見ていたいと思った。
「開けちゃったから飲みな」
凪さんはそう言って私の頭から手を離した。
頭を撫でられた感触がまだ残っていて、
ドキドキしながら、ゆっくりと缶を持ち上げ少し飲むと、
その冷たさが体に染み渡った。
おいしい......
「やっと笑った」
えっ。
ははっと私を見て笑っている凪さんに、
恥ずかしくなって、缶を持ったまま片手を頬に当てた。
「家、こっからどのぐらい?」
「家......ですか?」
なんで、家を聞くんだろう.......
「うん」
「だいたい......10分ぐらいです」
「そっか」
凪さんはぐーっとアイスコーヒーを飲んだ。
「それ飲み終わったら、家まで送っていくよ」