「秘密」優しい帰り道【完】
凪さんが立ち止まったから、私も手を引っ張られたまま立ち止まった。
ぐっと凪さんに引き寄せられて、見上げると顔が近くにあって、
その真剣な眼差しにきゅんとしてしまった。
すると真剣な表情の凪さんが吹き出して笑って、
前を向いてまた歩き出した。
ずっと手を繋がれて、どうしようもなくドキドキした。
温かくて、大きな手.......
「で、何?」
「えっ?」
「なんか聞こうとしてただろ?」
あぁ、そうだった。えっと......
何を聞こうとしていたんだっけ.......
あぁ、もう橋についてしまう.......
......あ、思い出した!
「あの、凪さんは......」
「だから、『さん』いらないって」
そっか、そうだった......でも、呼び捨てなんてできない.......
「凪......『くん』でもいいですか?」
「くん?」
凪さんは首を傾げた。
「まぁ、『さん』よりいいか。んで?」
よかった......
「えっと.....凪くんは、どうやっていつも家まで帰っているんですか?」
橋についてしまい、凪くんが立ち止まった。
「俺?俺は、高校から大通りに出て、
そっからバスで駅まで行って、反対口からまたバス乗って、家」
そうなんだ。バスを乗り継いで帰っているんだ。
「すごく遠回りさせてしまってますよね......ごめんなさい」
謝って下を向くと、手を繋いだまま凪くんが私の前に立って、
私の顎をくいっと持ち上げた。
「えっ」
顔を持ち上げられて、目の前に凪さんの顔があって、
恥ずかしくて......
「だから、俺が送りたかったんだって。
くるみは謝んな。わかったな」