「秘密」優しい帰り道【完】
エレベーターが開き、待っていた人たちが中に入ると、
凪くんは私の背中に手を回して、エレベーターには乗らず、
その場から少し離れた。
「くるみ」
隣りから顔を覗き込まれて、目を合わせていられなくてぐっと下を向いた。
「凪くんは、私といて恥ずかしくないですか?
こんな、子供っぽい私が隣にいて.....」
ちょっと泣きそうになりながら下を向いてそう言うと、
またぎゅっと手を繋がれて、はっとして顔を上げた。
「恥ずかしい訳ないだろ、バカだな......」
凪くんはこっちを見ないで少しムッとしながらそう言った。
「でも......」
私がそう言いかけると、
凪くんがくるっとこっちを向いて、ちょっと見下すように私を見た。
「俺は恥ずかしくなんかない。
くるみはもっと自信持った方がいい。
くるみは、すげぇ……かわ……
やっぱ……なんでもない。行こ」
凪くん、ちょっと怒ってる......
凪くんは自分の髪をくしゃくしゃっとしながら、
またエレベーターの方へと私を引っ張った。
「凪くん?」
「なんでもないって」
こっちを見ないまま、ちょっと不機嫌そうに答えた。
恥ずかしくないって言ってくれた。
私の言葉に、ちょっと怒ってしまうぐらい、
恥ずかしくないって言ってくれた。
それに、自信持った方がいいって……
その気持ちが嬉しくて、
エレベーター前に立ち、繋いだ凪くんの手をぎゅっとすると、
凪くんが繋いだ手と反対の手で、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。