「秘密」優しい帰り道【完】
凪くんは私からメガネをそっと外し、私のリュックを持った。
「出よう」
そう言って立ち上がると、私の手を引いてゆっくりと階段を下りて、
外に出た。
「凪くん、私.....
少しここで休んで落ち着いたらまた戻るから、凪くんは戻って」
凪くんは立ち止まって、私の顔を覗き込んだ。
「一緒に出て休もう」
「でも映画まだ途中なのに」
凪くんはまた歩き出し、映画館から出て、
屋上の駐車場に続く階段に私を座らせた。
凪くんは足が長いせいか、少し高い位置に座った。
「ごめんなさい。最後まで見れなくて......」
下を向いて謝ると、「おいで」と言われて後ろを振り向くと、
凪くんが隣をぽんぽんと叩いていた。
だから立ち上がって、凪くんの隣に座ると、
頭をゆっくりと撫でてくれた。
「大丈夫か?」
「うん」
「俺もさ、この映画つまんねぇなーって思ってたところだったから、
ちょうどよかったよ。
だから、気にすんな」
ははっと笑って、それからずっと私が落ち着くまで頭を撫でてくれた。
「凪くんは優しいですね」
少し落ち着いてきて下を向いたままそう言うと、凪くんは頭から手を離した。
「俺は優しくなんかないよ。
全然。
勝手だよ。俺、超勝手」
凪くんを見ると、今まで見たことないような切なげな表情を浮かべていた。
「凪くん?」
思わず名前を呼んでしまったら、「ん?」とこっちを向いて、
私が首を振ると、またいつものかわいい笑顔を見せた。