「秘密」優しい帰り道【完】
それから少しビルの中を歩いて、凪くんと駅に向かった。
「そうだ、来週の土日は文化祭だから、くるみもおいで」
駅の駐輪場の前で立ち止まると、凪くんが繋いだ手を離した。
そういえば、O高校の文化祭ってこのぐらいの時期だった。
「私、去年文化祭行ったから、もしかして凪くんとすれ違っていたかも」
私がそう言うと、凪くんは少し切なげに笑った。
「いや、俺.....去年の文化祭出てないから」
えっ......
「さぼった」
凪くんは、あはははっと笑って下を向いた。
「今年も別に俺、何もすることないんだけど。とりあえず1階の2-1にいるから」
「2-1......絶対に行きます」
「じゃあ、気をつけて帰れよ」
「あの......今日は本当にありがとうございました。
あと、ごめんなさい」
「気にすんなって、じゃあな」
凪くんは向きを変えてエスカレーターの方へと歩き出した。
凪くんが、なんだかあっさりと帰ってしまうことに、少し寂しくなって、
思わず凪くんを追いかけてカーディガンの裾を掴んだ。
「ん?」
凪くんは少し驚きながら振り向いた。
「あの、明日も会えますよね?」