「秘密」優しい帰り道【完】
土曜日、文化祭当日。
茜と中学の前で待ち合わせして、O高校へ行くことにした。
テンション高く盛り上がっているO高の生徒達、
華やかに飾りつけられた校舎。
初めてO高校の文化祭に来た時のことを思い出した。
私が行ける高校は、O高校しかないって思っていたから、
ひどい高校だったらどうしようって不安になりながら校門をくぐった。
でも入った瞬間、その不安は吹き飛んだ。
すごく楽しそうで、自由な雰囲気で、
この高校しかないから......ではなく、この高校に入りたいと思った。
校舎の中に入り、2-1を探して、茜と教室に向かうと、
トントンと肩を叩かれた。
振り向くと、凪くんの友達の潤平さんが立っていた。
「探してたんだよ、えっと......くるみちゃんだよね」
「......はい」
潤平さんはチラシの束を抱えていた。
「今日、凪......休みだよ」
「えっ、どうしてですか?」
「うんまぁ......風邪だな。うん風邪。
明日は来るよ。
くるみちゃんに伝えるように頼まれたんだ。
あぁ、よかったら、3-2来なよ、3階でお化け屋敷やってるから、はい」
そう言ってチラシを私に差し出してきた。
3-2?
「あの、3年生なんですか?」
「そうだよ」
凪くんと学年が違う......
「凪くんは2年生ですよね?」
「あっ、もしかしてそれも......
いや、学年なんか関係なく仲良しってのが、O高校の特徴?みたいな?
あはははっ、じゃ、俺これ配んなきゃだから」
逃げるように、潤平さんは走って行ってしまった。