「秘密」優しい帰り道【完】
次の日、日曜日。
今日は茜がいないから、ひとりで文化祭へ。
昨日ほとんど回ったし、今日凪くんが来るかどうかもわからないから、
午後から行くことにした。
ひとりで行ったことがなかったから、校門前で少し躊躇した。
もし、今日も凪くんが休みだったら、すぐに帰ろう。
そう思いながら、下を向いて校門を通り、
昨日覚えた2-1にまっすぐ向かった。
教室の近くに来て気づいた。
ひとりだと入りにくいし、覗くこともできない。
なんとなく教室の前をゆっくりと通りながら中を見ると、
凪くんが椅子に座っているのが見えた。
今日は来たんだ......
遠くから少し見えただけで嬉しくなって、
またもう一度戻って教室の中を見てしまった。
あれ......ふと凪くんの様子が気になって立ち止まった。
凪くんのクラスは喫茶店。
盛り上がっている生徒達とは少し外れて、
黒板前にひとりでポツンと椅子に座っている凪くん。
つまらなそうに遠くを眺めていた凪くんが、こっちを向いて目が合った。
凪くんがゆっくりと立ち上がると、一人の女子が凪くんに近づいて、
腕を掴んだ。
「五十嵐くんは、動かなくていいから、
ここ、座ってて」