「秘密」優しい帰り道【完】
どうしてそんなことを言うの.......
凪くんはその女子に、ははっと笑って、
「ちょっとトイレ」と軽く手を上げて、私の方に近づいてきた。
「昨日はごめんな」
廊下の壁に寄り掛かった凪くんと向き合うように立ち、
私は思いっきり首を振った。
「具合、大丈夫ですか?風邪?」
「うん、もう大丈夫だよ」
「でもさっき、動かなくていいからって言われてた」
「あぁ......」
凪くんは少し俯いてしまった。
「俺、気を遣われているんだよ、このクラスに。
クラスっていうか、学年っていうか.....
俺、本当は3年だから」
えっ........
「2年をもう一回やってんだよ。出席日数足んなくて。
俺、さぼりすぎた。ははっ
笑っちゃうだろ」
さぼるって、どうして......
でも、そんなに深く聞かれたら嫌かもしれない。
知られたくないことだったのかもしれない。
私にだって、凪くんに知られたくないことがある。
凪くんにだってあるのかも。
「笑わないです。いろいろ理由があってのことだと思うし。
どんな凪くんも、凪くんだから」
私の大好きな、凪くんだから......
凪くんは、顔を上げて優しく微笑んだ。
「ありがとう、くるみ」
私が首を振ると、手を伸ばしてきたからぎゅっとその手を繋いだ。
「おい!!喫茶店ってどこなんだよ!!もうわっかんねーな!!
俺の母校なのによー!!あはははっ!!!」
その時、廊下の向こうから、聞き覚えのある大きな声が響いてきた。
「なんだ?」
凪くんが、壁から体を起こした。