「秘密」優しい帰り道【完】
太った体に伸びた白いランニングと、黒いズボン。
薄くなった頭に、無精ひげ。
先生と思われる人に腕を掴まれて、まだ大声を出している。
「おじいちゃん、お酒飲んでますね?」
「だからなんだってんだ!!酒は俺のガソリンだ!!
先生よ、俺の娘が今度ここ受験するからよ!!
合格さしてやってよ!」
「娘さん?いや、それは、私には......」
大声を出しているその人は、先生の腕を引っ張って離した。
何事かと周りに集まってきた人たちが白い眼で見ている。
「できねぇってのか!!頼むよ~。俺の母校を受験してくれるってんだ。
いい娘だろ~?なぁ?
こうして父親が頼みに来てんだ!!できねえってことねぇだろ!!」
怒鳴り声を上げながら、先生の腕を掴んだ。
また、怒鳴っている。
またお酒を飲んで、人に絡んでいる。
また、警察呼ばれてしまう。
「お、いた!くるみ!!おいくるみ!!!」
気づかれて、思わずぱっと顔をそらした。
やめてよ......名前なんか呼ばないでよ......
やめて......!!
「くるみのお父さん?」