「秘密」優しい帰り道【完】
ゴロンと畳の上に仰向けに寝転がって、
古い天井を見上げた。
明日、凪くんベンチにいるかな......
もう、いないかもしれない。
あんなお父さんの娘だと知ったら、誰だって引いてしまう。
お父さんのバカ、大っ嫌い、
あんなお父さんじゃなくて、もっとかっこよくて若くて.......
違う。
普通のお父さんがよかった。
普通のお父さんだったら、こんな思いしなくて済んだのに......
うだうだしていたら、玄関の戸が閉まる音がして、
お母さんが仕事に行き、一人静かな家になった。
静かになると、また小学生の頃のことを思い出してしまった。
周りの生徒達の、まるで汚いものを見るかのような目。
クスクスと笑われて、陰口を叩かれて。
天井を見つめるのをやめて、ぎゅっと目を閉じた。
言われた陰口たちが、何度も何度も繰り返し蘇って、
耳から離れない。
ずっと思い出さないようにしていたのに......
その時、外からお父さんの大きな声が聞こえてきて、
思わず耳を塞いだ。
帰ってきた......
耳を塞いでも塞いでも大きな声が聞こえてきて、
うるさくて、
イライラして、
私は「もう!!」と立ち上がって、勢いよく自分の部屋の引き戸を開け、
廊下をドカドカと歩き、居間の襖をもっと勢いよくピシャッと開けた。
「お父さん!!うるさ......」
うるさいと言いかけて、固まってしまった。
居間の先に続いている縁側。
そこにいつも座っている、だらしないお父さんの隣に、
「凪くん......」