「秘密」優しい帰り道【完】
笑吉屋の前に着くと、
高校生たちの笑い声が大きくなり、
私たちは下を向きながら店の中に入った。
中にも高校生がいて、まっすぐ文房具コーナーに茜と進んだ。
文房具のところには高校生はいなくて、
ふたりやっと顔を上げて茜はノートを探した。
文房具コーナーのところの窓から外が見えて、
自販機の前にたまっている高校生たちが見えた。
高校生って、なんか大人......
来年から自分も高校生だけど、今の自分との違いを、
すごく感じてしまい、少し不安になった。
その時、ふとその中の一人の男子がベンチに座りながら後ろを振り返って、
窓越しに目が合ってしまい、私は思わずバッと目をそらした。
びっくりした......変な奴だと思われたらどうしよう......
見てんじゃねーよとか、店を出て怒鳴られたらどうしよう......
恐怖で一気に心拍数が上がってしまい、
リュックの肩紐を両手でぎゅっと握りしめた。
「これにした。行こ」
茜は一冊のノートを手に、私の腕を掴んで、
一緒にレジへと向かった。
会計が終わり、びくびくしながら茜と店を出て、
ベンチの方を背にして立った。
「ありがとね、くるみ。
じゃあ、また塾でね」
茜とはいつも校門で別れる。
茜は、私の家とは反対で川の方ではなく、
中学の隣にある高校の方へと手を振って歩いて行ってしまった。
私は川の方へ行かないと帰れない。
つまり、ベンチの前を通らないと帰れない。
さっきの人、大丈夫だったかな......
振り返るのが怖い。
そう思っていたら、後ろから足元にペットボトルの蓋が転がってきて、
私の右横で止まった。
そっと拾って、恐る恐る振り返った。
「それ、俺の」