「秘密」優しい帰り道【完】
「ごめんね、凪くん」
膝をついて、お茶をのせたお盆を縁側に置くと、
凪くんは首を振ってから「ありがとう」って笑った。
それからお父さんは、いつものようにぐびぐびとお酒を飲み、
昔のO高校について熱く語りだした。
「お父さん、もうほんとにちょっと......」
お父さんはいつも酔っぱらっていて、そして人に絡む癖がある。
誰それ構わず絡んで、
喧嘩になってしまうこともあって、結局警察を呼ばれてしまう。
だから、凪くんに絡むのが嫌だった。
長いし、臭いし、しつこいし。
私が止めても、お父さんは構わず語り続けていて、
「お父さん!もうやめて!!」って強く言ったら、
凪くんが私の肩を叩いた。
「最後まで聞かして」
「えっ......」
「お父さんの話、俺聞きたい」
凪くん......
凪くんはお父さんが熱く語り続けているのを、
ずっと興味深く聞いていて、今のO高校と比べたりして、
なんだか、楽しそうに二人でずっと会話をしているから、
私は縁側から少し離れて、居間の机の方に座って二人を眺めた。
二人を眺めて、また泣きたくなった。
この、こみ上げてくるものは.......
私、嬉しいんだ。
凪くんが、お父さんと普通に会話してくれるのが、
凪くんが、お父さんに対して、普通に接してくれることが、
嬉しいんだ。