「秘密」優しい帰り道【完】
散々語っておいて、お父さんは酔いつぶれてしまい、
外が暗くなってきた頃には、
またいつものように縁側で横になり、そしていびきをかいて寝てしまった。
「寝ちゃったな」
凪くんが縁側から立ち上がった。
「なんか掛けるものは?」
「いいよ、そんなの。いつも縁側でこの状態だから」
私も立ち上がって縁側に行き、空になったお皿や瓶をお盆にのせた。
「陽が沈んだら、少し涼しくなったよ。
なんか掛けてあげな」
凪くんは、バッグを肩にかけた。
凪くんの優しい言葉に、自分が恥ずかしくなった。
いつも縁側で寝ているお父さんに、今まで何か掛けてあげようなんて、
一度も思ったことがなかった。
ただ私は、縁側でいつも酔いつぶれて寝ているお父さんが、
道から見えるのが恥ずかしくて、
大嫌いで........
私は、お盆を一度居間の机に置いて、
居間の隣に続く、お父さんの部屋の襖を開けて、
そこからタオルケットを持ってくると、
ぶーぶーと、変ないびきをかいて寝ているお父さんの太った体に、
そっとかけた。
「じゃあ、俺帰るな。ごちそうさまでした」