「秘密」優しい帰り道【完】
はっ!
つ、つい……喜んでしまった……
恥ずかしすぎる……
頬を熱くしていたら、凪くんが笑いながら頬から手を離し、
また歩き出した。
家の前に着くと、いつも縁側にいるはずのお父さんがいなかった。
どこかにでかけているのかな.......
「ちょっと待ってて」
庭に凪くんを待たせて、私は玄関の鍵を開けて、
中に入った。
すると、居間の机の上に紙が置いてあった。
【おばあちゃんが入院したから、お父さんと一緒に病院行ってくるからね。
帰りは遅くなるから、戸締りしっかりね】
おばあちゃんが入院......
その紙を持って、居間の窓を開けて、縁側に出た。
「これ......」
凪くんに紙を見せると、凪くんは縁側に腰掛けた。
「心配だな」
「うん」
私も縁側に座った。
「ひとりで留守番大丈夫か?」
「うん。一人で留守番は、慣れているから」
「塾は?」
「今日は塾の自習室行かないで家で勉強する」
「そっか......」
凪くんが紙を返してきたから、そっと受け取った。
「じゃあ、勉強頑張れよ」
凪くんは、立ち上がってバッグを肩にかけなおした。
「もう、帰っちゃうの?」
座ったまま凪くんを見上げると、凪くんは優しく笑いながら、
私の頭を撫でた。
「勉強の邪魔しちゃ悪いだろ。ちゃんと鍵閉めて勉強しろよ。
じゃあな」
ポンポンと私の頭を撫でて、凪くんが歩きだした瞬間、
凪くんのブレザーに手を伸ばして、裾を掴んだ。
「もう少し、一緒にいたい......」