「秘密」優しい帰り道【完】
凪くんは振り返ったまま、少し困ったような顔で首を傾げた。
「ほんとに、少しでいいから......
ちゃんと勉強するから。
ダメかな......」
もう少し......もう少しだけ一緒にいたかった。
どうしても。
凪くんは、ふっと笑ってまた縁側に戻り、ゆっくりと腰掛けた。
「ありがとう、凪くん」
隣りから笑いかけると、凪くんは小さく首を振って笑った。
少し間隔を空けて座っている縁側。
もう少し一緒にいたいって引き留めてしまったけど、
いざとなると、何を話せばいいのかわからない。
あまりにも静かで、今この家に二人きりなんだって、
急に意識してしまって、ドキドキしてきた。
「あっ、なんか飲む?」
「いや、いいよ」
「・・・・・・・・」
......話が続かない。
凪くんは、肩からバッグを下して、
後ろに手をついて足を伸ばして座った。
「縁側っていいな」
沈黙の中、突然凪くんがそう言って空を見上げた。
「そうかな......私はそうは思わない。なんか古いしボロいし」
「あはははっ、ボロくはないじゃん。
俺んち、マンションだから。こういうの憧れるよ」
「憧れ?そんな風に言ってくれるの凪くんだけだよ」
凪くんはこっちを向いて、笑いながらネクタイをもう少し緩めて、
また後ろに手をついた。
その仕草がなんだかかっこよくて、
きゅんとしちゃって.......
来年絶対に同じ制服を着たいと思った。
同じブレザー
同じネクタイ
ネクタイ......
「凪くん、ネクタイって結ぶの難しい?」