「秘密」優しい帰り道【完】
何をされるわけでもないのに、ものすごくドキドキする。
私、何考えているんだろう......
凪くんは私のブラウスの襟を立てて、
くるっと自分のネクタイをかけた。
「まず、こうやって回すだろ.....」
目の前に、凪くんのきれいな長い指が見えて、
私にネクタイを結んでくれている。
ちらっと凪くんを見ると、少し伏目がちの凪くんが見えて、
真剣にネクタイを結んでいるその表情にきゅんとしてしまった。
「そして、こう。わかったか?」
ふと凪くんの目が私を見たから、びくっとしてしまった。
「あぁ......全然わかんない」
ていうか、全然ネクタイ見てなかった。
凪くんばっか見ちゃって......
「しょーがねーな......」
凪くんはまたするするっと私からネクタイを外した。
「自分でやってみる?教えてやるから」
「う、うん、やってみる」
私はとりあえずネクタイを首にかけて両手に持ち、
「えっとえっと.....」と考えていると、
「こうやるだろ」って凪くんがそっと私の手を掴んだ。
一緒にネクタイを結んで、
「できた!」って、顔を上げたら、
頬を両手で包み込まれた。
「凪......くん?」
頬に凪くんの温もりを感じながら、
上目で凪くんを見つめると、
さっき見た伏目がちの凪くんの顔がぐっと近づいてきて、
柔らかい凪くんの唇が自分の唇にあたった。
すぐに唇が離れて、その瞬間、
「凪くん......」
目の前の凪くんに名前を呼ぶと、ちらっと睨むように私を見つめたから、
その視線にきゅんって......
凪くんはまた目を閉じながら、頬を包む手を首元に滑らせて、
もう一度、唇を押し当ててきた。
離れては、塞がれて、
離れては、また塞がれて.......
そして深く求められたら、胸がきゅーって苦しくなってしまって、
凪くんの制服のブレザーをぎゅっと掴んだ。