「秘密」優しい帰り道【完】




何をされるわけでもないのに、ものすごくドキドキする。



私、何考えているんだろう......


凪くんは私のブラウスの襟を立てて、

くるっと自分のネクタイをかけた。



「まず、こうやって回すだろ.....」



目の前に、凪くんのきれいな長い指が見えて、


私にネクタイを結んでくれている。


ちらっと凪くんを見ると、少し伏目がちの凪くんが見えて、


真剣にネクタイを結んでいるその表情にきゅんとしてしまった。



「そして、こう。わかったか?」


ふと凪くんの目が私を見たから、びくっとしてしまった。


「あぁ......全然わかんない」


ていうか、全然ネクタイ見てなかった。


凪くんばっか見ちゃって......



「しょーがねーな......」


凪くんはまたするするっと私からネクタイを外した。



「自分でやってみる?教えてやるから」



「う、うん、やってみる」



私はとりあえずネクタイを首にかけて両手に持ち、


「えっとえっと.....」と考えていると、


「こうやるだろ」って凪くんがそっと私の手を掴んだ。



一緒にネクタイを結んで、


「できた!」って、顔を上げたら、



頬を両手で包み込まれた。



「凪......くん?」



頬に凪くんの温もりを感じながら、

上目で凪くんを見つめると、


さっき見た伏目がちの凪くんの顔がぐっと近づいてきて、


柔らかい凪くんの唇が自分の唇にあたった。


すぐに唇が離れて、その瞬間、


「凪くん......」


目の前の凪くんに名前を呼ぶと、ちらっと睨むように私を見つめたから、

その視線にきゅんって......



凪くんはまた目を閉じながら、頬を包む手を首元に滑らせて、

もう一度、唇を押し当ててきた。


離れては、塞がれて、


離れては、また塞がれて.......



そして深く求められたら、胸がきゅーって苦しくなってしまって、



凪くんの制服のブレザーをぎゅっと掴んだ。






< 66 / 123 >

この作品をシェア

pagetop