「秘密」優しい帰り道【完】
「こんにちは」
凪くんに近づくと、凪くんはお母さんに頭を下げた。
すると、隣の女の人も小さく頭を下げた。
「いつも一緒に帰ってくれているみたいで......
仕事で会えなくて残念だなってずっと思ってたの。
いつか会いたいと思ってたけど、こんなところで会うなんて」
お母さんが話している間、隣の女の人がじっと私を見ていて、
その視線が怖くて、顔を上げることができない。
「すみません、挨拶できなくて......」
「隣の方は?」
お母さんはズバッと聞きにくいことを凪くんにぶつけた。
お母さんすごいな.......
「あ......姉です」
......お姉さん?
思わず顔を上げて、お姉さんの顔を見ると、
お姉さんは怪訝そうな顔で頭を下げた。
あぁ、お父さんに引いちゃっているのかなぁ……
それともなんかお父さん失礼なことを言っちゃったのかな……
「凪もいい男だけど、姉ちゃんもいい女だな!」
がはははっとお父さんが大笑いすると、お母さんはお父さんの腕を掴んで引っ張った。
「お姉さんだったのね。よかった。
じゃあ、くるみ。
お父さんうるさいから先に車行ってるね」
お母さんは凪くんたちに小さく会釈してから、
お父さんを病院の外へと引っ張って行った。
3人になって、誰も話し始めないから、
しばらく沈黙が続いた。
お姉さんと知ってホッとしたけど、
お姉さんの少し怒っているような表情が怖くて、
私はまた下を向いた。
「凪、あんた何考えてんの?」