「秘密」優しい帰り道【完】
お姉さんが凪くんに怒り出したから、思わず顔を上げた。
するとお姉さんと目が合って、
お姉さんは眉間にしわを寄せた。
やっぱり、怒っている。
お父さんじゃなくて、私がなんかやっちゃったのかな……
「くるみ、お父さんたち待っているから、もう行きな」
そんな.......
なんか変じゃん。
こんなの変だよ。
そもそもなんで凪くんがここにいるの?
お姉さんは、なんでこんなに怒っているの?
「凪くん、なんで病院にいるの?」
お姉さんは私の言葉にハッとした顔をした。
「凪、言ってないの?」
「それは......」
「毎日一緒に帰ってるって、そんなことして......
まさか、この子と付き合ってるの?」
お姉さんはさらに凪くんの腕を強く揺すった。
「受験生だから、受験が終わったら付き合おうと思ってる」
「凪......」
お姉さんは言葉を失っていた。
「言ってないって......凪くんなんのこと?」
なんだろう......何を隠しているんだろう......
「凪はね」
「姉ちゃん、ちょっと黙っててくんないかな。
くるみは、何も知らなくていい。
合格することだけを考えていればいい。
たいしたことじゃないから。
じゃあ、また月曜日な」
凪くんはお姉さんの腕を掴んで、
待合室の向こうの廊下の方へと歩いて行ってしまった。
なんだろう。
たいしたことじゃないって、じゃあ何かはやっぱりあるんだ。
知らなくていいって、
私には秘密なんだ......