「秘密」優しい帰り道【完】
12月25日
クリスマスといっても、私は朝から塾の冬期講習。
本当は、お金が高いから冬期講習を受けないつもりだったんだけど、
お母さんが大丈夫だからって受けさせてもらえることになった。
せっかく高いお金を出してもらったんだから、しっかり勉強しなくちゃって、
塾の後、凪くんに会うことは考えないようにして、
勉強に集中した。
授業が終わり、茜と外に出ると、少し離れたところに凪くんが立っていた。
「私服の彼氏も、超かっこいいね。モデルみたい」
茜が耳元で囁いた。
「だからまだ彼氏じゃないって」
「だって受験終わったらって言われてるんでしょ?
もう付き合ってるようなもんじゃん。
いいなぁ.....
じゃあ、また明日ね。楽しんできな」
茜は自転車を出して、こぎだした。
私は自転車を塾のところに置いたまま、凪くんの元に走った。
「いっぱい待った?ごめんね」
凪くんはかわいく目を細めて首を振った。
深緑色のダッフルコートに、デニムのパンツを履いていて、
黒いマフラーを巻いている凪くんが、
私に手を伸ばしてきた。
「行こ」
「うん」
ぎゅっとその手を掴むと、いつも温かい凪くんの手が今日はすごく冷たくて、
やっぱりいっぱい待たせちゃったのかなって、申し訳なく思ったら、
「くるみの手、あったけー」って、
凪くんは私の手を繋いだまま、
自分のコートのポケットの中に手を入れた。