「秘密」優しい帰り道【完】
凪くんは一度目をそらして、またこっちを向いた。
とても悲しげな表情で。
「比べてないよ。
くるみは……くるみだ」
そう言って、ポケットから繋いだ手を出し、
そっと手を離すと、私を引き寄せてぎゅっと抱きしめてきた。
抱きしめられたのに、とても悲しくて虚しい。
凪くんは、私を思って抱きしめているのだろうか......
それとも、好きだった人を私に重ねているのだろうか......
そんなことを考えてしまう。
似ていないと言われたのに、
比べていないと言われたのに、
どうして信じることができないんだろう。
凪くんはそっと私の肩を押して、顔を覗き込んできた。
「腹減った。なんか食おうか」
いつものように、かわいい笑顔を見せて、私の頭を撫でた。
「うん」
信じたい......その笑顔は、ちゃんと私に見せてくれているんだって。
ぎゅっと繋がれた手の温もり
この手は、ちゃんと私と手を繋いでくれているんだって
信じたい……
だって私......凪くんと離れたくない......