「秘密」優しい帰り道【完】
目の前には、大好きな凪くんがいて、
こんなに近くにいるのに、
ほとんど毎日のように会っているのに、
凪くんの心の中には、私の知らない凪くんがいる。
一緒にご飯を食べて、目が会うたびに微笑みあって、
凪くんを離したくない、
離れたくないって、もっと思った。
「くるみ」
食べ終わり、外のクリスマスツリーを見ながら、
いつの間にか深く考えすぎていた。
考えないようにしていたのに......
私は凪くんの顔を見つめて首を傾げた。
「トマトは?」
お皿の上に、ひとつだけ残ったプチトマト。
「私、トマト苦手で......」
凪くんは、ふっと笑ってプチトマトをつまんでヘタを取り、
私に差し出してきた。
「ちょっとだけでも食べてみ」
「えええ......嫌だよ、すっぱいし」
凪くんは、トマトをつまんだまま、あはははっと笑った。
「ちっこいトマトなら、大丈夫だって」
「ほんとに?」
「たぶん」
「た、たぶんって.....」
「ほら」
凪くんはぐっとプチトマトを私の口元に近づけた。
私はそっとプチトマトを凪くんの指から取って、
じっと眺めた。