「秘密」優しい帰り道【完】
「ん?」
少し首を傾げて凪くんがこっちを向いた。
「あ.......あのね。
帰り、橋まででいいから」
少しずつ、気持ちに整理を........
「どうして?」
凪くんは立ち止まった。
「えっと......お父さん、
お父さんが絡んで、いつも時間かかるでしょ?
もう受験まで日がないから、私早く勉強したくて」
嘘だ。
そんなの。
本当は、もっとずっと凪くんと一緒にいたいくせに。
「そっか.......わかった。
勉強頑張れよ」
凪くんは、私の頭に大きな手をのせて、
ぽんぽんと優しく撫でた。
頭を撫でてくれる時のかわいい笑顔が、私はたまらなく好きだった。
でもきっと、
こうやって希未さんにしていたんだ。
凪くんは、希未さんにしていたこと、
今、希未さんにしたくてもできないことを、
私にしているんだ。
そう思うと、今までされてうれしかったことが、
全部、
切なくて悲しくて苦しくて......虚しくなる。
橋までゆっくり歩いて、
橋に着くと、凪くんは手を離した。