「秘密」優しい帰り道【完】









2月下旬



受験まであと少しとなった日曜日。



凪くんと、神社に合格祈願に行くことになった。



バレンタインデーの日に、


凪くんは学校を休んだから会えなくて、



だから今日、リュックの中にチョコを入れて来た。


塾は今日は行かない。



私は今日、


自分の気持ちに整理をつける。




1時に駅の反対口のコンビニ前で待ち合わせした。



反対口にある大きな神社。


小さい頃に何度か家族で行ったことがあったけど、



あまりよく覚えていない。




コンビニ前に行くと、凪くんがコンビニの中にいるのが見えた。



私と目が合うと、優しく微笑んで、


何か買ってから外に出て来た。



「何買ったの?」


凪くんは、笑いながら小さな袋を見せた。




【くるみチョコ】


「えっ?」


あはははっと凪くんは笑って袋を開けた。



「思わず、買っちゃったよ」



一粒取り出して、私の口元に差し出した。



『だからいつもくるみはさー

素直に受け取れって』



凪くんの言葉を思い出して、ぱくっと凪くんの指からくるみチョコを食べた。



凪くんは、もぐもぐとしている私の顔をじっと見つめて、


切なげに笑った。




あ......今希未さんを思い出しているのかな.........




「うまい?」



私は頷いた。



凪くんも一粒食べて、袋を閉じてビニールに戻すと、


私のリュックの中に入れた。


「くるみにやる」











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