「秘密」優しい帰り道【完】
背中のリュックをぽんと優しく叩かれた。
「ありがとう」
凪くんを見つめて言うと、凪くんがそっと手を繋いできた。
「バスの方が早いんだけど、歩いてもいい?
歩いても、10分ぐらいだから」
「うん」
クリスマスツリーを見たショッピングモールとは逆の方向へ、
手を繋いで歩き出した。
あまり周りに建物のない、広い道の歩道。
ゆっくりと歩く凪くんの隣りにいられることが、
私は幸せだった。
ずっと手を繋いで、一緒に歩幅を合わせて歩いていきたかった。
でも、もう........
終わりにする。
大きな赤い鳥居が見えてきて、それをくぐって石畳を歩くと、
また鳥居が見えてきた。
鳥居をくぐってしばらく歩いた先に、赤い太鼓橋が見えて、
ゆっくりと登ると、下に池が見えた。
そして、りっばな本殿が見えてきた。
大きな木々に囲まれた神社。
二人で拝殿に近づくと、お賽銭を投げ、手を合わせた。
何を祈ったらいいのか、わからなくなってしまった。
O高校合格。
それって、気持ちの整理をつけても、高校で凪くんに会うことになる。
でももう願書も出したし、家計のことを考えれば、
どうしてもO高校に合格しなくてはいけない。
高校で凪くんに会っても........
凪くんが笑っていれば、
凪くんが幸せなら、
きっと私は、これでよかったんだって思える。
そうだ。
【凪くんが、心から笑えるようになりますように】
私はゆっくりと目を開けた。