海辺の元で
ガチャ。
23時半、両親が帰って来た。
なんだか私はドキドキしていた。

リビングへ向かった。

父と母はぐったりしていた。
「おかえり♪」

明るくした。
明らかに、いつもとは違う両親の顔だった。

「うん…ただいま」

母は、私の目を見ないで自信なさげに答えた。

「お腹空いてるでしょ?食事しなよ。」

いつも、店の料理の残り物を夕食に持って帰ってきてるのに、今日はなかった。
「雪乃…話があるんだ」

父は、さっきと変わらぬトーンで言った。

「え?何か食べてからで良いよ!」

「いや、大事な話なんだ。」

「お父さん、そんなに大事なの?お母さん、何か言ってよ!!」

あまりに、イラついてしまった。

「なに?」
私はストレートに言った。

三人は、テーブルの席に座った。

母がおもむろに話した。

「あのね、落ち着いて聞いてほしいの」

私は、少し溜め息をしてから
「だから、なに?」
と、聞いた。

父が、話を切り出した。

「実は、店を…閉めようと思うんだ。」

言葉が出て来なかった。

と、言うより、意味が分からなかった。

見付からなかった。

私は、父と母の顔を交互に見た。

「本気…なの?」

父を強くみつめた。

「あぁ…」
父も、私を見た。

「どうして?」
私は、悲しみが込みあげてきた。

「莫大な…借金があるんだ。」

「借金?だって、うち儲かってるじゃない!借金なんて…信じられない。」

「店の借金は、なんとかこのまま繁盛すれば、取り戻せるんだ。」

「じゃあ、どうして?それならやっていけるじゃない。」

「莫大な借金は…父さんのせいなんだ。雪乃、許してくれ!」

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