海辺の元で
「はぁ?!」

話が読めない。かなり、混乱している私。

「父さん…信頼してた人の借金肩代わりの紙に印を押して…まさか、こんなことになるとは、思わなかったんだ…。うちの店を建てる時も、力を貸してくれた人で。」

「だからって、何でそんな簡単に印押すのよ!信じられない!なにやってるのよ!」

私は、怒りがとめられなかった。

「違うの!違うのよ、雪乃!」
それまで黙っていた母が言った。

「借金の肩代わりの印だなんて、知らなかったのよ…」
母は、すでに泣いている。
「知らなかった?」
私は、さらに怒りでいっぱいになった。
その怒りは、父に向けるものではないはずなのに…

ぶつける相手が、父しかいなかった。

「馬鹿なんじゃない?」

私も、涙がこぼれた。

産まれてから一度だって、父のことを、馬鹿にしたことなんてなかった。
思ったこともない。

なのに、馬鹿 と、口にしている自分がいた。

こぼれた涙は、怒りではなく、自分が父に対して言った言葉が悲しく、辛かった。

次の瞬間、母が私の頬をたたいた。

パチン…

痛い。痛い。痛い。

私は、母を睨んだ。涙は止まらない。

父が、母をとめた。

「お父さんに向かって、馬鹿だなんて…お母さんが許さないわよ!あの店を誰よりも…お母さんも雪乃よりも想っているのは、お父さんなんだよ!店は、お父さんの夢……店が、お父さんそのものなんだよ…。その店を…実現させる為に、どれだけ頑張ってきたか、雪乃だって知ってるでしょ??お父さんはね、色んな人に頼んで、何からなにまで死ぬ気で手に入れたんだよ…。信頼してた人は、店の建設の時に、凄く世話になった人だった。だから、お父さん、信じてたんだよ。借金の借用書だなんて…疑いもしなかった。それが、馬鹿なの?雪乃、、、お父さんに誤りなさい!!」

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