海辺の元で
「悪いのは、俺なんだ!雪乃は悪くない…良いんだ…父さんが馬鹿だったんだ…。雪乃…父さんもな、正直思ったんだ…、俺はなんて、馬鹿なんだろう?って。」

私は、もう、何も言えなかった。

「莫大な金額って??どれくらいなの?」
泣きすぎて、発作っぽくなった。

「一億五千万くらいだ」

心臓に 一億 という 響きが突き刺さったみたい。

「店、閉めて…どうやって返すの?」

「それは…」
父も泣いていた。

「返すには、働けば良いじゃない!店でこれまで通り働いてさ…」

「無理だ。」

私の言葉を遮断するように言った。

「じゃあ、どうするのよ?!」
私はうろたえた。

「………一億を返すのは、この先、死ぬまで…いや、生きている間じゃ、返しきれない。どんなに頑張っても、返せない。」

「なにを言ってるの?」

「雪乃、父さんは、雪乃に借金地獄の暮らしをさせたくない。だから、父さんは決めたんだ…。店を閉めるってことは、もう、父さんの夢もこれからもない…」
私は、恐ろしくなった。

「まさか…」

父の考えが分かってしまうのが、恐かった。

「だから?」

頭がおかしくなりそうだった。

「ねぇ、しっかりしてよ!だって、その借金は、うちのじゃないでしょ!どうして、どうして、うちが、地獄を送らなくちゃならないのよ!その、借金した人を探して見付けて……」


「みつからないよ。見つけたとしても、どうにもならない…」

「なんで、そういう方向なの?」

「父さんも母さんも、店をやりながら、必死で借金を返す方法や、色んな事を考えたんだ。絶対に生きる方法はある!こんなことに負けてなんてられないってね…でも、みつからないんだ。こうしている間にも、」
父は失望していた。

「だから、決めたんだ。」
なぜか、冷静に言った。

父も母も病気にかかってしまったんだ。

娘の私だって、わかった。
反発する気力もなかった。
ただ無力だった。

こんなこと、ドラマの世界だけだと思っていた。

いや、ドラマだってこんな展開ないだろう。

私は、あっけなく波乱の渦に飲み込まれてしまった。
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