海辺の元で
あの夜のことは、思い出したくなかった。


とにかく眠り続けた。


学校でも、普通に過ごした。

親友の明日美が、私に言った。

「なぁ〜んか最近、雪乃、テンション高いよね〜!」
「当たり前よ〜!テストも好調だし、学生生活最後なんだから、楽しくやりたいじゃない!?」

「そうだけど…。明るさが普通の明るさじゃないんだよね〜。」

明日美は、変に明るい雪乃を疑った。

「ひょっとして〜?彼氏でも出来たぁ?そぅなんでしょお!?私に内緒で!隠しても無駄よ!教えなさいよ〜!」
明日美は、私の制服を掴んだ。

「ん〜?!それは、ないよ〜!それに、明日美じゃないんだから、そんなことで浮かれたりしないもん♪」
「何それ〜??」

ふざけながら、移動教室に向かった。

家に帰ることが辛く、友達の家で勉強したり、カラオケに行ったり…
夜、遅くに帰るのが日課になっていた。

父と母とは、あれからロクに話していない。

けれど、私は、分かっていた。

暗黙の了解を私が受け入れるのを…。

なんて、最悪なんだろう?
間違っている。

そう、強く思っている心さえ、吸い取られ、なくなっていくようだ。

私はいつしかこんなことを考えるようになった。

世界には、明日が来ない人生を送っている人がどれくらいいるんだろう?

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