海辺の元で
その日は、とても冷たい風が吹いていた。

海の潮風が刺すように痛く、波も荒れ模様。

11月25日

最後の仕事。

店を閉め、従業員の田辺さん、由香さん、まどかさんと別れの挨拶をした。

「丘崎さんのご恩、忘れません!」
田辺さんと父は、抱き合った。

みんなには、経営困難でどうしようもなく、閉めることにした。と話していた。

店を出してから今日まで、7年の月日だった。

あっという間。

別れの会なんて、余計寂しくなるから…と、最後の日までいつもと変わらずに終え、特別に会も開かなかった。

「本当に終わりなんだね…」

私が言った。

父も母も声にならない表情をした。

そして、家に着いた。

目に映るすべてが、愛しくて、涙が出た。

私は、いったん自分の部屋に戻り、急に誰かに電話をしたくなった。

もう、二度と会えないから。

最初に、親友の明日美にかけることにした。

でも、留守電になっていて繋がらなかった…

私は悲しくなかった。

「ごめんね…明日美…ありがとう」

そう、つぶやいた。

携帯電話を閉じようとして、ふっと思い出した…。

純平…

何してるかな?

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