それでも傍にいたくて
僕は後ろを向き口を尖らせて言う。
「何笑ってんだよ…」
「だ、だって…おかしいんだもの……ね?彩華」
「ほんとほんと、まさかここまで面白い人だなんて思ってなかった」
笑っていたのは、藤田とその親友の、眞鍋 彩華(まなべ あやか)。
彼女も僕と同じクラスだ。
「大地君って絶叫系苦手なんだね」
くすくす笑う藤田に僕は少しむっとした。
「人のこと笑ってるけど、藤田はどうなんだよ」
そう言うと彼女は得意げに笑う。
「私は絶叫系大好き!スリルがあって、最高!」
「マジかよ…」
僕と藤田が話してる様子を見ていた海がこう言った。
「二人…いつの間にそんなに話すようになったんだ?」
「「え?」」
僕らの声が重なる。
「それはあたしも思った。あたしさ、蒼空がここまで男子と話してる姿見たことなかったし」
「彩華…?」
「もしかして二人…できてる?」
眞鍋の言葉に海が唖然とする。
「え!?そうなのか!?大地、そうなのか!?」
僕の肩を掴みがくがくと揺らしながら藤田に視線を移す。
「大地と…できてんの…?」
藤田は目を丸くして首を傾げるとこう言った。
「あ、ううん。大地君とはこの前公園でちょっと話しただけだし、できてるとかそういうのじゃないよ?
それに、私なんかとできてるなんて言ったら大地君に失礼だよ…」
苦笑いを浮かべる藤田だったけど、さりげなくフラれた気がして何となく心が痛んだ。
そんな僕を見て眞鍋がにやりと笑った。
「蒼空…、九条にとっては失礼なことじゃないよ」
「眞鍋…お前何言って…」
「田代も思うでしょう?」
眞鍋は海を見て言う。
すると海もにまにまと笑いながら頷く。
「え?何…?どういうこと?」
藤田だけが理解していないようだったが、二人は僕の肩にぽんと手を乗せ笑うのだった。
「ま、頑張りな、九条。蒼空は鈍いよ?」
「お前ら……」
僕はため息を一つこぼしたのだった。