それでも傍にいたくて
結局その日、僕は海と眞鍋に散々からかわれ、藤田が困惑しているのを見て笑った。
何となくだけど、僕も他の男子のように彼女を好きになっているんだと思う。
「せーんぱい!」
練習を終え、着替えていると誠也がやけにニヤつきながら声を掛けてきた。
「なんだよ、誠也」
「俺、聞いちゃったんすよ。先輩が、あの藤田 蒼空先輩と仲良く話してたって!」
そう言った瞬間、部室の中にいた全員が僕を見た。
恐らくこいつにそんな情報をもたらしたのは海だろう。
現に肩を震わせて笑っている。
バレていないつもりなのだろうか……残念ながら丸わかりだ。
「先輩…もしかしてもしかして…できちゃってます?」
調子に乗った誠也に部員どもはひゅーと言って茶化し始める。
「あのな、それ…海に聞いたんだろうけどさ。そういうんじゃないから」
きっぱり言うと誠也は「なあんだぁ…つまんないの」と言ったが、目は明らかに疑っていた。
「んじゃ、お疲れー」
さっさと着替えると僕は部室を出た。
その様子を海を含めた部員全員が生暖かい視線で僕を見ていたことを後々知った。