それでも傍にいたくて
日曜日。
花火大会の行われる神社の鳥居の前で待ち合わせ。
あれから色々考えた末、海たちは誘わなかった。
どうせなら二人の時間を楽しみたい…。
僕はいつからこんなに贅沢な考えを持つようになったんだろう。
相手は仮にもあの…藤田蒼空で、僕の彼女でも何でもないのに…。
ジーンズのポケットに手を突っ込んで鳥居の前で蒼空を待ちながらそんなことを考えていた。
すると、久々に見る栗色の髪が見え手を振ると、向こうも気づいたようで早足でこちらに向かってくる。
「遅くなってごめんね…っ、髪、結ってもらうの時間かかっちゃって…」
少し息を切らし謝る蒼空。
「いや、別にいいよ。浴衣…似合ってるな」
薄いピンク色の浴衣にアシンメトリーに結われた髪、いつもの蒼空とはまた違った雰囲気にドキドキした。
「そうかな?ありがとう!大地君もカッコいいね、普段着って初めて見た」
カッコいいだなんて言われたことなくて、少し驚いてしまう。
「そういや、普段着で会うの初めてだもんな。僕はいつもこんなんだから…」
Tシャツにジーンズ。
これが僕のスタイル。楽だから好きだ。
「そうなんだ!私は今日は浴衣だけど…今度、また別の日にお出かけしようね!」
「おう」
今度…
また出かけられるんだ…と嬉しさを噛みしめニッと笑った。